[プレスリリース] 震災後の家族間コミュニケーションについての調査

『子育てハッピーアドバイス』シリーズの著書で、精神科医の明橋大二とマーケティングリサーチを行う株式会社メディアインタラクティブ(所在地:東京都渋谷区)が共同で震災後の家族間コミュニケーションについての調査を実施しました。   今回の未曾有の大災害の被害も、物質的な被害は少しずつ回復の兆しを見せていますが、精神的なストレスを受けたこころの被害の回復はもしかすると、これからかもしれません。特に、ストレスの処理の仕方も未熟な子どもたちにとっては、メンタルケアが今後課題となってくることが想像できます。今回、メディアインタラクティブが実施した調査をもとに「東日本大震災子ども支援ネットワーク」のスペシャルアドバイザーとしても活躍する明橋がその解説を行っております。  ぜひご参考くださいませ。   東日本大震災子ども支援ネットワークHP:http://shinsai-kodomoshien.net/   以下、調査データとその解説をお送りいたしますので、報道のご参考にしていただければ幸いです。   
【調査結果】
※「アイリサーチ」にて本調査における詳細資料の無料ダウンロードサービスを行っております。ご興味のある方は下記より、アクセスをお願いします。記事等からのリンクも問題ございません。
http://www.i-research.jp/report_dl/list.html

【調査概要】
1.調査の方法:株式会社メディアインタラクティブの運営するアンケートサイト「アイリサーチ」のシステムを利用した WEBアンケート方式で実施
2.調査の対象:全国の2~6才の子どもを持つ母親500名を対象に実施
3.有効回答数:500 人
4.調査実施日:2011年5月25日(水)~5月 31 日(火)

【設問一覧】
Q1.震災後、お子様の行動、言動の変化はありましたか。
Q2.震災後、家族のコミュニケーションに変化はありましたか。
Q3.震災後、子どもとの接し方で困っていることはありますか。
Q4.震災後、旦那様との関係に変化はありましたか?
 
Q1,
明橋医師コメント: 変化なしが56.6%ということは、逆に言うと、2人に1人が、何らかの変化があった、ということです。回答が、被災地のみならず、全国からの回答だということを考えると、今回の震災は、被災地はもちろんですが、直接の被災地以外に住む子どもたちにも、かなりの影響を与えていることが分かります。 また、変化の内容を見ると、「ちょっとした物音で怖がる」「甘えてくるようになった」がそれぞれ約20%、5人に1人の割合となっています。このような行動は、子どもの不安感を表していて、やはり相当な割合で、子どもたちが今回の震災に対して、不安を感じている様子がうかがえます。「寝付きが悪くなった」「夜一人で寝れなくなった」という、睡眠に関するものも、それぞれ約5%で、睡眠にも少なからず影響を与えています。 あと、「些細なことで反抗するようになった」「攻撃的になった」というのが、それぞれ約7%ですが、おびえるだけでなく、このように反抗したり、攻撃的になったりするのも、不安感の表れであることが多いです。また、場合によっては、避難所生活や、停電、生活物資の不足などで、子どももストレスをため、その発散として、上記のような行動が出ている可能性もあると思います。 余震や地震速報におびえる、といった直接的なサインのみならず「黒いクレヨンをよく使うようになった」とありますが、これも子どもの不安のあらわれでしょう。それと同時に、「津波や壊れた建物の絵をよく描く」という回答もありますが、絵をかくことで、自分の不安な気持を吐き出そうとしている、治療的な意味もあります。 選択肢にはありませんでしたが、「トイレが一人で行けなくなった」「頻繁にトイレにいく」「おねしょをするようになった」という排泄の問題もよく記載されています。これも、やはり不安のサインの一つでしょう。 これらのサインを受け、どう接していいか悩む親御様もいらっしゃると思います。それについてはQ3の回答を例にご説明したいと思います。  
Q2,
明橋医師コメント: 震災後の家族のコミュニケーションについては、多くは、一緒にいることや、話し合いが増えた、という回答で、おおむね、この震災が、家族の絆を深める方向に作用していることが分かります。未曾有の大災害でしたが、これをきっかけに、家族の絆を見直すきっかけになればいいと思います。
Q3.震災後、子どもとの接し方で困っていることはありますか。(複数回答可)(N=500)
明橋医師コメント: 子どもへの接し方についての悩みでは、震災報道を見せていいのか悩む、という回答がありますが、これは親御さんの適切な感覚が働いていると思います。じっさい、不安になっている子どもに、繰り返し震災の映像を見せることはよくないとされています。その他の質問にも、皆さん少なからず悩んではいますが、わたしは、こういうことに親御さんが気づく感覚(震災報道を見せていいのか、甘えを受け入れていいのか、地震の話題にふれていいのか、怒っていいのかなど)がすばらしいなと思います。 そして、それぞれの悩みについての私なりの回答ですが、まず、「地震の話題に触れていいものか悩む」とありますが、基本は、子どもが、話してきたら、それをしっかり聞くことが大切で、逆に子どもが話そうとしないのに、こちらから、根掘り葉掘り聞くのはよくありません。話そうとしないのは、話すことでふたたび思い出して、トラウマを深くするのを避けようとしているからで、逆に自ら話したがるのは、話をすることで、自分の気持を整理しようとしているのです。
いずれも、子どもが自分で自分の心を回復させようとするはたらきで、大切なのは、子どもの表現を大切にすること、大人が人工的に介入しないことです。 「震災報道は見せていいのか悩む」ということですが、結論から言うと、あまり見せない方がいいです。大人がテレビを見ると、どうしても子どもも見てしまうこともあると思います。しかし、震災の映像を見ることで、子どもはふたたび震災の恐怖を体験することになってしまいます。特に、3~4歳までの子どもは、現実と映像の区別が充分つかないので、たとえば、内陸部に住んでいても、津波の映像を見ることで、「ここにも津波が来るんじゃないか」とおびえたりすることになります。 「赤ちゃん返りを受け入れていいのか悩む」については、答えははっきりしています。受け入れていいです。赤ちゃん返りをするのは、それだけ不安だから、安心感を求めて、赤ちゃん返りをしてきているのです。それをしっかり受け止めることで、子どもは安心感をもらい、また自立してゆきます。自立のもとになるのは、突き放すことではなく、充分な安心感を与えること。その安心感は、赤ちゃん返りや甘えをしっかり受け止めることで、育ちます。 ここで甘やかしていたら、自立心が育たないんじゃないか、と思う人もあるかも知れませんが、そういうことはありません。「甘えた人が自立する」甘えを受け止めてもらって、充分安心感をもらった人が自立するのです。 また、このように赤ちゃん返りを受け止めることが、いわゆるPTSD(心的外傷後ストレス障害)を予防することにもなります。  
Q4,
明橋医師コメント: 夫との関係については、85%が変化ない、と答えているものの、中には、仕事から早く帰り、家にいる時間をふやしてくれた、というお父さんが7%、家事に協力的になった、というお父さんが、5%など、見習うべきお父さんも少なからずおられるのだなと思いました。 しかし、特に変わりない、という85%は若干気になります。いい状態が変わりなく続いているということなのか、ダメな状態が変わらない、ということなのか…何となく後者のような気がするのが、男性としては、微妙にコワイところですね。  
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■「アイリサーチ」 URL  : http://www.i-research.jp  
■明橋大二医師プロフィール
昭和34年、大阪府生まれ。 精神科医。 京都大学医学部卒業。 国立京都病院内科、名古屋大学医学部附属病院精神科、愛知県立城山病院をへて、現真生会富山病院心療内科部長。 専門は精神病理学、児童思春期精神医療。 ・現職 千里金蘭大学児童学科客員教授 スクールカウンセラー 児童相談所嘱託医 NPO法人 子どもの権利支援センターぱれっと理事長 「東日本大震災子ども支援ネットワーク」スペシャルアドバイザー 診療のかたわら、年100回以上の講演活動と執筆活動を行なう。
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